創作 「二人の布袋」
当代のカリスマ、二人の「布袋」を並べて書いてみました。これを最初に書いたのは今から二十年近く前のことだったと思います。今でも題材が古びていないのは、世界は違えど、それだけ二人とも息の長いスターだ、ということでしょう。「結翰墨縁」というのは、簡単にいえば書道が縁を結ぶ、ということ。皆さまとの縁に、心からの感謝の気持ちを込めて。
(軸装/青玄)
創作 「いまできること」
「拝む」
「祈る」
「希(のぞ)む」
三月十一日は、私たちに本当に多くのことを考えさせてくれたと思います。特に、あの直後に感じた絶望的な無力感は、今でも忘れることができませんが、おそらく何年も、いや何十年もかかるだろう復興への道程の中で、自分にできること、すべきことを少しずつ見つけて、そして続けていきたいと思っています。国や地域や民族によって宗教観は様々ですが、亡き人を拝み、平和を祈り、そして幸せを希む気持ちは、どこか根っこのところではみんな同じなんじゃないか、と思うのです。その想いを、くずした文字で顕してみました。たとえば、日本語や漢字を知らない世界中の人々にも、この字の意味が自然に伝わったらいいなぁ、と思います。
(半紙/石州半紙 軸装/青玄)
臨 河東碧梧桐の書『滞欧作』巻物より
ミモーザに鼻つける事を一人でする夜
ミモーザの匂ひをふり返り外出する
ローマの花 ミモーザの花 其(の)花を手に
大好きな書家・河東碧梧桐の臨書です。彼の自由奔放で伸びやかな筆線と、物語に満ちあふれた作風に魅せられ、毎年必ず一作ずつ出品しています。文字通り、まるで筆と自由に戯れているかのような大らかさ。これは、碧梧桐がローマに出向いた折の、いわば「紀行詩」の一部を和紙に臨書したもの。六朝風の書体、ミモザの花を思わせる鮮やかな黄色の筋。何となくエキゾチックな香りを味わって頂けたらと思います。
(表装/青玄)
臨 伊東深水『つめ』
同じ浮世絵でも、私の大好きな北斎とは趣を大きく異にする伊東深水、昭和十一年の作。浴衣をはだけて無心に足の爪を切る女性を描いた版画、タイトルは「つめ」。艶やかな温もりや気だるさと同時に、息をのむような肌の白さを、墨と紙でどこまで表現できるかがテーマでした。
(和紙/石州和紙(島根)の巻紙 表装/青玄)
はがきシリーズ
手紙やメモに気軽に使って頂きたくて、これまでの墨絵作品の中から主なものをポストカードにしました。すべての種類を一枚ずつ集めた約六十枚のセットを販売します。1セット千五百円。ぜひ、メモやお手紙、コースターなどに自由にお使いください。
ツンデレボックス2 書・小林 覚/イラスト・森谷玲代
イラストはもちろん、早大書道会の後輩で、萌え系イラストの「神」である森谷玲代さんに、無理を言って(ウキウキと)描いてもらいました。「ツン」の方はお客さまに向かって失礼な、と思われることを承知の上で、さて、ボックスの扉を開けると中には・・・。QRコードからアクセスすれば、お好きな女の子を「お持ち帰り」できるようになっています。
(制作協力/長場俊之)
暖簾『北斎漫画』 画・小林 覚/本藍染・小林かおり
大好評? 回文シリーズ ~人物特集~
今年の新作の発表です(笑)。いよいよネタも枯れ始めて困っていたら、浅賀康彦くん、林絵美子さん、豊川美樹さん、他たくさんの方がアイデアを下さいました。これ、もうほとんど皆さんとの合作ですね。今年は趣向を変えて「人物特集」。皆さんも傑作ができましたらぜひお知らせ下さい。来年の作品にさせて頂きます☆
(台板/小林家で長い間、愛用してきたまな板)
劇団扉座公演 新浄瑠璃『朝右衛門』/人情噺『紺屋高尾』
扉座の主宰・横内さんは早大の四期先輩。デザイナーの吉野さんはぴあの編集部時代にとてもお世話になった方。不思議な縁に結ばれて、扉座の公演ではいつも筆文字のタイトルを私がお手伝いしています。『朝右衛門』は、劇作家・小池一夫さんの原作「首斬り朝」をモチーフにした新浄瑠璃、『紺屋高尾』は今年の新作。どちらも傑作でした。
(イラスト/溝口イタル アートディレクション/吉野修平)
響和堂公演 『マスラオ』コンサート
邦楽の若手演奏家たちに活躍の場を与えようと、利益そっちのけで奮闘されている「響和堂」の仲村映美さんに共感し、このコンサートのタイトル文字をお手伝いしました。琴、バイオリン、尺八のイケメン若手演奏家五人による新しいユニットのリサイタル、このチラシは今年開催された二回目のものです。最初はあえて漢字、カタカナ、英文字の三種類をご提供しましたが、こうして並べてみると、実は最も強いインパクトと判読性を持っているのが「カタカナ」であることが分かります。日本人が独自に生み出した“カタカナ”は、まさに文化の融合や独創の象徴とも言える気がします。
(企画制作/響和堂 イラスト/gelico アートディレクション/ピエール塩澤)
DM制作 ブティック「Blanc」
祭ばやし展のファンでもある旧知の知人から、自身でオープンしたブティックのDMにぜひ私のスケッチを、と依頼されてお手伝いしましたが、思いのほかお客さまに好評だったとお聞きして、今年の新バージョンを作りました。お店を訪ねた私の目に映ったもの、感じたものをそのまま残すような感じで書きましたが、女性向けの商品を男性の視点でうまく捉えることができたのか、ちょっとまだ不安です。
(企画/「Blanc」代表・加藤則子)
パンフレット「お中元」「お歳暮」
サークルKサンクスさんの公式パンフレットです。儀礼的な贈答や接待を控える風潮が増える中、昨今の「お取り寄せ」ブームともあいまって、まだまだその需要は根強いようです。ついフォントに頼りがちなバリエーションを、人の手による筆文字やペン字で表現できないか、というのが依頼の主旨でした。というわけで、表紙だけでなく、ジャンル名やキャッチコピー、商品名やその“吹きだしコメント”にいたるまで、あちこちに私の手書き文字が使われています。物に形を変えて贈り贈られるものは、実は感謝の気持ちやねぎらいの想いのはず。手書き文字によって、少しでもその意味合いが表現できていたとしたら、それはそれで素敵なことかもしれません。
(企画制作/サークルKサンクス デザイン/フリーフライト)
イラスト制作「来栖けい・松見早枝子の、出会いの名店すごろく」
以前から親しくさせて頂いている、「美食の王様」で有名なグルメ評論家・来栖けい君と、「ビューティレシピスト」として活躍する松見早枝子さんのご結婚にあたり、二人の希望で、山あり谷ありの出会いのストーリーをイラストに残すお手伝いをしました。ジョエル・ロブションで開かれた披露宴は、まさに美食の宴。司会は宮川俊二さん、お客さまには日本の三つ星シェフが勢揃い、私のすぐ隣りには金メダリストの岩崎恭子さん・・・各界の大御所が勢揃いされる中、ご列席の皆さんにこの拙いイラストをお待ち帰り頂きました。愛すべき二人のために、ほんの少しでも役に立てていたのであれば、私にとっても幸せなことです。
創作 いきものがかり『ありがとう』
ヒット曲の歌詞というのは、シンプルな中にもどこか強いメッセージが込められているものですが、作品では濃い墨や薄い墨を筆自体に混ぜながら、余韻が残るようにあえて淡く表現してみました。今日は大切な人と、ぜひ手をつないでお帰り下さい。祭ばやしも二十二年、たくさんの人への「ありがとう」の気持ちを添えて。
(軸装/青玄)
創作 平原綾香『君といる時間の中で』
いつも祭ばやしのパーティで歌ってくれる劉玉瑛さんのソロライブに添えて書いたものです。ライブの際には輝く海の映像に載せましたが、今回は波文様の黒を基調としたパネルに仕立ててみました。作品を通して、「叶わぬ夢などないんだよな・・・」と、ほんの少しでも元気を出して頂けたら嬉しいです。
(パネル作成/青玄)
創作 「一筆達磨」 書・小林 覚/布染め・小林かおり
文字通り、一筆で達磨の姿を表現したもので、江戸時代をはじめとしてよく書かれていたようです。トイレにでもふと飾っておいたら楽しいかな、と。
(軸装/青玄)
『顔晴ろうニッポン! 手をつなごう関西!』
東日本大震災からの復興を後押しするイベントとして、関西の大手イベンターや人気アーティストらが一堂に集まって開催された、関西最大のチャリティフェスのタイトル文字をお手伝いしました。「顔晴(がんば)れ」は、今でこそあちこちで使われるようになりましたが、少なくとも僕が把握している限りで最初に使ったのが、関西発のこのライブでした。さすが関西、と感心した記憶があります。Tシャツは、その際に販売された公式グッズ。収益金はすべて被災地に寄付されました。何もできない自分にひどく無力感を感じていた頃、もしかしたら何かの役に立てたのかも・・・と感慨深く思ったエピソードでした。
(企画/薮内知利)
パンフレット「父の日・母の日」
サークルKサンクスさんの公式パンフレット。表紙に加えて、吹き出しや一言コメントなども私が書いています。中を見ると、父の日や母の日の贈り物にも個性的なバリエーションが増え、時代を映しているなぁ・・・と改めて感じました。
(企画制作/サークルKサンクス デザイン/フリーフライト)
『ハイブリッドカー まるわかり図鑑』
人気の新車種紹介特集雑誌に、筆文字を提供しました。一台一台の個性に合わせて選ばれた一文字を、あえて様々な書体で書き、編集者に自由に選んでもらったものです。「車」というハードなものと重ねたことで、思った以上にページの中にシズル感が出たような気がします。
(企画/岩渕雅次 発行/内外出版社)
『弘前城手廻組藩士の日常と世相』
私が学生時代、都内九大学の書道サークルで作る「東京学生書道連盟」の幹事長をしていた頃、その手下として大いに辣腕をふるってくれた、日本女子大の鈴木まどかさん。実は彼女、日本に数名しかいない前田流平家詞曲相伝、つまり平家琵琶の正統的伝承者として、今やその世界では大変な有名人。そんな彼女が執筆した新刊本のタイトルに、僕の筆文字をご提供しました。二十八歳でこの世を去った若き藩士の「勤務日誌」には、当時の日常がありありと描かれています。
(著/鈴木まどか 発行/大河書房)
創作 「在」
漢和辞典を引けば、「在」とは「あること」「住むこと」「いなか」・・・。今年は、自分が「今ここにある」ことの意味を、本当にいろいろと考えされられた一年でした。軸に使った布は、アフリカで織られた泥染めのタペストリー。作り手のひたむきな日常や想いが、剥き出しに伝わって来るような布に魅せられ、ここに「在」の一文字を埋め込むことにしました。今ここにあることに感謝して、少しずつ「恩返し」をしていければと思っています。
(軸装/青玄 布/アフリカ泥染めタペストリー)
「メリー・クリスマウス!」
書道というのは広く二次元のもの、とされていますが、祭ばやしではあえて三次元の作品をいくつか出すようにしています。浮いているように見える紙はどこにあるのか、いったい猫はどこから出てきているのか・・・人間の目は不思議ですね。
名入れ甕焼酎
父の日の贈答品に、とお酒の卸会社さんが企画した「名入れ甕焼酎」。軽い気持ちでお引き受けしたら、なんと注文が三百本!何日も徹夜しながら、大切な方のお名前を一つ一つ、直筆で書かせて頂きました。せっかくなので、「いかにもお酒のラベル風」の書体で書いてみましたが、思いのほか皆さまには喜んで頂けたようです。今年の父の日でも、引き続きお手伝いすることになりました。皆さまぜひご注文を♪
(販売元/升喜)
『女川カレー』
東日本大震災で大変な被害を受けた宮城県・女川(おながわ)町。ボランティアによるここでの炊き出しがきっかけとなり、地元の食材を使ったカレーが東京で商品化されることになりました。子供からお年寄りまでが安心して食べられる優しい味のカレーです。炊き出しのお手伝いに行かれない分、せめて何かの役に立てたら・・・と思ってお手伝いさせて頂きました。まだ試作品とのことですが、復興への小さな第一歩になればと思っています。
(企画/蓮見太郎)