『ワインバー みや川』店名ロゴ
元NHKニュースキャスターで、最近は情報番組のコメンテーターとしても知られる宮川俊二さん。還暦にはどうにも見えず、妙齢の女性を泣かせたら右に出るものは・・・と唸らされるナイスミドル。そんなご本人より、たまには大人の遊びに付き合ってよ、と頼まれて看板のお手伝い。キャスターのみならず、ワインエキスパートの資格を持つワイン通の宮川さんが、軽井沢に夏季限定で開けたのが『ワインバーみや川』。軽井沢らしい爽やかな字を、とのリクエストを無視して書いた、おどろおどろしいタイプの文字がなぜか一発採用に(笑)。お付き合いしてかれこれ十数年。仕事も遊びも中途半端ならざるプロの領域、男の生き方として憧れざるを得ない彼の後姿を、私は常に追いかけています。
『時』
2005年、ある後輩が、病に苦しむ友人を祭ばやし展に連れてきてくれました。彼女には内緒で、彼女の大切にしている聖書の一節をぜひ作品にしよう、と二人で決めました。彼女を絶望的な気持ちから救いたい、それが後輩の必死の願いでもありました。左側は、僕の好きなカールライモンド・ポパーという哲学者の言葉。後輩自身も難病と闘いながら、でも毎年必ず祭ばやし展に足を運んでくれています。今回は、そのお友達からも温かいお手紙を頂きました。そして、元気な笑顔でこの作品を観に来てくれました。多くの人の涙や笑顔とともに、祭ばやし展は今日のこの日を迎えています。
(和紙 / 唐長からかみ)
『「すべての事に時がある」の一節は、聖書の中で、私が一番好きなみ言葉です。私は2004年に症状が出て、翌年「重症筋無力症」と診断され、一年近い入院生活を送りました。あらゆる治療をしても、全く回復の兆しも見えず、本当に苦しかったです。そんな時、入院中に出会った生涯の友達に、祭ばやし展に誘われ、入院先の病院から車椅子で連れて来てもらいました。そこで、この言葉に“再会”しました。私はカトリック信者で、元々知っていた言葉なのに、ずしりと響きました。“病気である自分”も、神がちゃんと、その時に与えてくれたのだと、気がつきました。今は、寛解という、症状が治まっている時期です。いつ再発するかわかりません。再発する前に、仕事も子どもたちとの関係も、やれる限りの事を精一杯やっています。この言葉に再会させてくれた祭ばやしと、生涯の友達に感謝しています。』
臨 河東碧梧桐『壁梧桐墓』
六体書と呼ばれる独特な筆法で、ドキッとするような言葉をのびのびと書き連ねる碧梧桐に魅せられ、毎年、いろいろな角度から彼の作品を臨書しています。09年の題材は、文字通りの墓碑銘。昭和12年に没した彼が、なくなる数年前、昭和6年頃に書いたものとされています。縁起がいいとか悪いとか、準備がいいとか悪いとか、そんなこと何も関係なく、きっとこれを書いている時は気持ちよかっただろうなー、そんなことを感じながら僕も気持ち良く書きました。
(和紙 / 中国温州皮紙 表装 / 青玄)
『一団』
神奈川県のキャンプ座間にある在日米陸軍総司令部の司令官(Wiercinski少将)が、自らの在任中のスローガンに「一団」(ONE TEAM)という日本語を選びました。日本語を選んだことからも、その方の並々ならぬ意気込みやセンスが感じられますが、さらにTシャツやキャップなどに統一で入れるロゴを「筆文字で作りたい」との希望があり、祭ばやし展のご縁で私がお手伝いすることとなりました。外国の方にとって筆文字は、文字ではなく記号や絵として受け止められます。なので、あえて「絵的に印象強いもの」を意識して十点ほど書いてみましたが、規律を重んじる軍隊ならではのカッチリとした、それでいて勢いと力強さのあるこの書体が選ばれました。現在このロゴを使用したTシャツ、帽子は、青森県から沖縄県までのすべての在日アメリカ陸軍数千名の兵士が訓練用として常用しています。額は、展覧会後に司令官にプレゼントさせて頂く予定。二十年目にして、初めて外国の方に提供した文字です。
(コーディネイト / 松田一 額装 / 青玄)
三十六歌仙絵~『拾遺和歌集』『金葉和歌集』より~
駿河守朝臣兼盛
かぞうれば 我身につもる 年月を をくりむかふと なにいそくらむ
中納言敦忠
あひみての のちのこころにくらぶれば むかしはものを おもはざりけり
源俊頼朝臣
やまざくら さきそめしより ひさかたの くもゐにみゆる たきのしらいと
仮名の細字作品は、時間をかけて苦労したわりには小さく、目立たず、それに加えて普通の方には読めないのでわかりにくい、という三重苦(笑)を抱えているのですが、だからこそ、毎年必ず作るようにしています。今回は、特に小さな細字に歌仙絵を添えて、中世の趣を演出してみました。
(表装 / 青玄)
中島みゆき『糸』
『なぜめぐり逢うのかを 私たちはなにも知らない
いつめぐり逢うのかを 私たちはいつも知らない
どこにいたの 生きてきたの 遠い空の下 ふたつの物語
縦の糸はあなた横の糸は私 織りなす布はいつか誰かを暖めうるかもしれない
なぜ生きてゆくのかを 迷った日の跡のささくれ
夢追いかけ走って ころんだ日の跡のささくれ
こんな糸がなんになるの 心許(もと)なくてふるえてた嵐の中
縦の糸はあなた 横の糸は私
織りなす布はいつか誰かの 傷をかばうかもしれない
縦の糸はあなた 横の糸は私
逢うべき糸に出逢えることを 人は仕合わせと呼びます』
09年、シャンソン歌手の劉玉瑛さんと出逢い、改めてこの歌の存在を知りました。1992年に発売されたアルバム『EAST ASIA』の一曲。劉さんは09年から活躍の場を移すために、この大都会へ神戸から単身上京。一言一言を大切に、そして大事に歌う劉さんの想いが、祭ばやし展に対する僕の想いとも重なりました。「仕合わせ」とは、「運命の巡り合わせ」という意味。「幸せ」の語源とも言われています。20年目の祭ばやし。細い糸はやがて幾重にも織りなされ、こんなに広くて大きな布になりました。もっとたくさんの、もっと素敵な出逢いが、この場所から生まれますように。
(作詞・作曲 / 中島みゆき 和紙 / 能登仁行和紙 表装 / 青玄)
臨 伊東深水『髪』
20年目の祭ばやしだからこそ、あえて手馴れた北斎を離れ、新しいことに「挑戦」したいと思いました。同じ浮世絵でも、北斎とは趣を大きく異にする伊東深水、昭和27年の作。浴衣をはだけて湯浴みをする女性の後姿、タイトルは「髪」。温もりと同時に、息をのむような肌の白さを、墨と和紙でどこまで表現できるかがテーマでした。
(和紙 / 石州和紙(島根)の巻紙 表装 / 青玄)
浮き上がる美少女ライダー ~3Dメガネを使ってご覧ください~
『バイクよりひらり降りたる青年が
ヘルメットを脱ぎ美少女となる 』
こういうの、僕のど真ん中なんです。意外性とか、別の顔とか、誰も知らない素顔とか…♪
(詩 / 阿部綾『雪明りの坂』より)
春夏秋冬~季語より~
まだ祭ばやし展を始めて間もない頃、季語をモチーフにした作品を出品しました。20年目の09年、再び原点に立ち戻るような気持ちで作り直した一作です。日本語の柔らかな響き、奥ゆかしさ、そして瑞々しさ。四季の移ろいがあるからこそ生まれた、このキラキラするような言葉たちの輝きを、目で見て、そしてぜひ口に出して、感じてください。特殊な和紙を使い、裏を打つ和紙の色がうっすらと透けるように表装しています。
(和紙 / 桜型抜き和紙 表装 / 青玄)
DCTストア『とりいぬかめつる』シリーズロゴ
DREAMS COME TRUEの所属事務所が運営する公式ショップ“DCTストア”初のオリジナル商品、「とりいぬかめつるシリーズ」のタイトルのお手伝いをさせて頂きました。「とりいぬかめつる」とは、わかる人にはわかる真面目なダジャレ(わからない方は、声に出して早口で・・・)。第一弾は、人形町・甘酒横丁にある亀井堂の銘菓「瓦せんべい」に、オリジナルの焼印を手仕事で焼き入れたもの。匠の技が守り続けた江戸の粋と明治の香り、そして現代のJ-POPのコラボレーションです。商品は通信販売のほか、09年12月10日から29日まで全国を回るドリカムの冬フェス『ウィンターファンタジア』の会場でも販売されました。
(企画ディレクション / 田中美希 煎餅 / 人形町・亀井堂)
劇団扉座『百鬼丸』公演タイトルロゴ
劇団扉座の09年の目玉公演は、手塚治虫の「どろろ」を原作とする「百鬼丸」の再演でした。前回もタイトル文字のお手伝いをしましたが、これが二度目のタイトルです。主宰の横内さんは早大の四期先輩。今回は前回よりさらに力強く、同時に研ぎ澄まされたような痛みをも表現できれば、と思って書きました。前回より今回、今回より次回と、私も舞台と同じよう成長していきたいと思っています。
(ポスター・パンフレットデザイン / 吉野修平)
臨・山口百恵の字
今から約30年前の1980年10月5日、山口百恵さんは武道館でのラストコンサートを最後に引退しました。その模様を収めた完全版がDVD化されるにあたり、タイトル文字のお手伝いをしました。普通と少し違うのは、今回の文字が、山口百恵さん本人が書いた「山口百恵」のサインの臨書である、ということ。つまり、本人の実際の書体を見ながら、私が本人になりきって筆で書いた文字とその変化形、なのです。あれからもう30年。色褪せない歴史の輝かしさに、改めて感動を覚えています。
(DVD『伝説から神話へ~日本武道館さよならコンサート・ライブ / 完全オリジナル版』 ジャケットデザイン / 吉野修平)
イロモノシリーズ「オタク万歳!」
テーマは「オタク川柳」です。左上の色紙はデビュー当時の中山美穂さん本人からもらったもの。右上は高橋美枝さん、左下は徳丸純子さん、知る人ぞ知る「懐アイドル」ですが、よく見ればベースはいずれも駿台の教科書(苦笑)。今振り返ると、こうして二十年も真っ当にサラリーマンを続けてきたなんて・・・自分が一番信じられません。
※各界の皆さまが、第20回展の様子をブログでご紹介くださっています。よろしければこちらも併せてぜひご覧下さい。
【キャスター・宮川俊二さんのブログ】
http://yasai-marche.com/blog/?p=649
【写真家・nobuさんのブログ】
http://blog.zenne-inc.com/?eid=1425579
【小説家・早坂恋子さんのブログ】
http://ameblo.jp/koikoinissi1192/entry-10399262745.html
【受付のお手伝いをしてくれた劉さんのブログ】
http://ryugyokuei.blog79.fc2.com/blog-date-200911.html
【DCTストア「とりいぬかめつる」シリーズと、店長タナカミキさんのブログ】
http://store.dctgarden.com/list/list_original
http://blog.dctgarden.com/DCTSTORE/2009/11/post_6.html
【修平庵さんのブログ(山口百恵DVD秘話)】
http://blog.shuheian.com/?eid=1067368