仏恥義理、と書いて「ぶっちぎり」。イマドキの若者には「何ソレ?!」って感じでしょうが、今から20年ほど前、僕らはそんなフレーズをよく耳にしていました。個々をソーシャルに結ぶ時代への過程で、労働組合や政党や町内会なんかと同じように、レディースだの暴走族だのチーマーだのといった「集団」も、その必然性や価値を失っていったんだろうな、などということを改めて感慨深く思ったりしました。
この作品は、中村すえ子さんという、いわゆる伝説のレディース総長の自伝を、関顕嗣監督が映画化したもの。15歳にして東松山に拠点を置く「紫優嬢」の総長になり、当時のレディースファンからカリスマ的な人気を博した彼女の、その数奇な運命と親子の絆を描いたストーリー。見た目の派手な印象と違って実は地味で真面目な作品ですが、関監督の丁寧な作りのお陰で、実話の語る重みがじんわりと心に残る秀作です。
今回はこの映画のタイトル文字「ハードライフ」、それに作品中に出てくるト書きの筆文字をお手伝いしました。「紫の青春・恋と喧嘩と特攻服」なんて、まさか自分で筆で書く日が来るなんて思ってもいませんでしたが(笑)、劇中に出てくる当時の実物の「特攻服」やのぼり、垂れ幕など、どれもみんな素敵な「文字」ばかり。デジタルのない時代だからこそ、「思い」や「気持ち」がこうした文字一つ一つに生き生きと表現されていたのでしょう。
主人公すえこを演じたのは、寺島咲さん。まさにレディース全盛期に産声を上げた清純派の彼女が、凄みのあるレディース総長を熱演しています。礼儀正しくて、でも大物のオーラを感じさせる期待の女優。他にも秋山莉奈さんや元カリスマレースクイーン山崎みどりさん、元日テレジェニックの小田あさ美さん、「マスカットシリーズ」(TX)で人気のRioさんなど、フォトジェニックな面々が特攻服を身にまとって迫力の演技を見せています。
関監督との縁がきっかけですが、飲んだくれのDV親父を演じるパンチ佐藤さんはご近所さん友達、すえこを最後まで見守る母親役の秋本奈緒美さんは僕の初恋の人☆…おそらくデジタルのない時代から育まれていた、人と人とのいろんな繋がりを感じたお手伝いでした。
※映画『ハードライフ』公式サイトのトレーラー最後に、私の筆文字が出てきます。
http://www.hard-life.net/trailer90.html
※原作/中村すえこ「紫の青春~恋と喧嘩と特攻服~」(ミリオン出版刊)