旧知の友人より、「夢であった新築の家の表札に、ぜひ君の筆文字を」との依頼。表札といえば、少なくとも数十年はその家の顔となる文字であるだけに、滅多なことではお引き受けしないのですが、旧友からのたっての依頼とあって今回ばかりはお手伝いすることにしました。
「判読性は担保したうえで、隷書・篆書ではなく、勢いが感じられて、無骨さがある字が好きです」(秋山氏)との希望を受け、不要とされた隷書や篆書風のものも含めて(笑)、いくつかの書体をご提供しました。
正方形に近いモダンな表札を予定しているとのことで、予め周囲に余白が多くなることをイメージして、少し太く大胆に、いつもよりやや大柄に肉付きよく書くことにしました。
最後の最後まで、第一希望の文字が奥様と合わなかったと聞きましたが、最終的には夫の希望が尊重されてご覧のような完成版に。選ばれた字は、流麗な中にも勢いや遊びを取り込んだもので、飛び散る墨や滲みをそのまま表札にしたものなど、まず見かけたことがありません。手書きの文字ならではの風合いは表現できていると思います。
文字選びのせいでかえって夫婦仲が悪くならないかが心配ですが、遊び心のある、それでいて堂々とした「顔」が出来上がった気がします。末永く、秋山家が繁栄することを重ねてお祈りしています。
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